最新作です
「自分たちが暮らすだけであれば、建売りで十分です。
次世代に伝える生活をしたいので、建築家に依頼しました。
妻の仕事(鍛金)柄、
ミュージアムとして公開することも視野に入れています。」
開口一番、そうおっしゃったお施主さんと、1000坪の森という敷地。
チームなかがわ、最新作のご紹介です。
1000坪の森はとても雄大で、当然ですが、人間のスケールをはるか超えています。
私たちは、その森を前にして、ただ家を建てるだけではなく、
土地全体を観察しながら、環境として育てる価値を提案しました。
建築は、生活の場であるとともに、
森を見守る「土地観察者=Land watcher」を育て、この土地と対峙する拠点です。
そして、大きな森と小さな人間の媒介となるように、
生活にそった小さなスケールと、
生活するには大きすぎるようなオーバースケールをあえてぶつけるような建築としました。
オーバースケールなテラスを、森を縫うようにつくり、
森そのものよりも親密な森(森を知るための新しい土地)として扱えないだろうか
と考えたのです。
生活の場となるコンパクトな四角いガラスの建物の回りに、
大きなリング状のテラスがフラフープのように各層偏心してくっつく構成です。
リングは既存樹をよけるように細く、森の間を通されているので、
そのほとんどがふきぬけで、すかすかです。
生活の場に寄っているところ、森に寄っているところ、
リング状のテラスは、一周する間に様々な体験があります。
森を見渡せるよう4層としており、
最上階は、高さ12mの樹々より頭ひとつ抜けています。
重層したリングは、ミュージアムの順路となることも想定されており、
仮に生活の場がすべてクローズとなっても、
訪れたすべての人を垂直な森の体験へと誘います。
森のなかでひらけている部分には、耕耘機を利用して、畑も作られる予定です。
各層、偏心する方向が異なるので、森との関係や見え方、感じ方も異なります。
「土地観察者=Land watcher」とは、ここで生活する人だけでなく、
この場所、この建築を訪れるすべての人を対象としています。
1000坪の森を前にして、
土地全体を観察しながら育てるという生活や生き方、その価値を
このプロジェクトを進める中で、考えていきたいと思います。
私は、常々建築を考える際、
お施主さんのご理解や共感を得るというのはもちろんですが、
と同時に、
「純粋に行ってみたい、体験してみたい」と思われるような建築をつくりたいと思い、日々の作業にあたっています。
今回のプロジェクトはまさに、
行ってみたい、体験してみたいと強く思える建築であり、
土地にあるすべて、生活と建築と森を、つきつはなれつの関係として、
徹底的に等価に扱う試みだと考えています。
最後に。
オンデザインでは、
代表西田と担当者がフェアな共同設計体制をとる「パートナー性」に加え、
今年の4月頃から、
担当者にサポートする人がつく、もしくは複数担当者がつく「チーム性」
という設計手法が、プロジェクトの内容によって、試行されています。
今回のプロジェクト「Land watcher」は新築住宅のプレゼとしては、
私自身はじめてチームで挑みました。
複数人の知恵が入ることで、
この、住宅としては特殊すぎるこのプロジェクトは
より大きな広がりを持てたのではないかと感じています。
なかがわ